医療費控除、これも対象?「おむつ代」「歯科矯正」など意外と知らない対象費用


医療費控除といえば、病院の診察代や薬局の薬代をイメージされる方が多いですが、実は「え、これも?」と思うような費用も対象になることがあります。

一方で、歯科矯正のように「目的」によって対象外になるケースや、おむつ代のように「特定の書類」が必要なケースなど、知っておかないと損をしてしまうルールもあります。

この記事では、見落としがちな控除対象費用と、申告時に必要となる特別な手続きについて詳しく解説します。


1. おむつ代を医療費控除にするための条件

介護などで日常的におむつを使用している場合、その購入費用を医療費控除に含めることができます。ただし、単にレシートがあるだけでは不十分で、以下の条件を満たす必要があります。

  • 対象となる方: 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりであり、医師の治療を受けている方。

  • 必要な書類: 医師が発行する**「おむつ使用証明書」**が必要です。

  • 2年目以降の特例: 介護保険の要介護認定を受けている場合、2年目以降の申告では、市町村が発行する「おむつ使用の確認書」等で代用できる場合があります。

ポイント: 大人用おむつだけでなく、尿とりパットやリハビリパンツも対象に含まれます。購入時のレシートや領収書は必ず「おむつ代」であることがわかるように保管しておきましょう。


2. 歯科矯正は「目的」で決まる

歯科矯正は高額になることが多いため、控除対象になるかどうかは家計に大きく影響します。判断基準は「美容」か「治療」かです。

  • 対象になる(治療目的):

    • 発育段階にある子供の成長を阻害しないための矯正。

    • 噛み合わせが悪く、咀嚼障害(うまく噛めない)などの機能的な問題がある大人の矯正。

  • 対象にならない(美容目的):

    • 見た目を美しくすることを主な目的とした、審美的な矯正。

アドバイス: 大人の矯正の場合、税務署から「診断書」の提示を求められることがあります。事前に歯科医師に「咀嚼障害の改善などのための治療目的である」という診断書を書いてもらえるか相談しておくとスムーズです。


3. 介護保険サービスの自己負担分

同居している親族などの介護サービス費用も、一部が医療費控除の対象になります。

  • 全額が対象となるもの: 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などの「医療系サービス」。

  • 条件付きで対象になるもの: デイサービス(通所介護)やショートステイなどは、上記の「医療系サービス」と併せて利用している場合に、その自己負担分が対象となります。

  • 施設入所: 介護老人保健施設(老健)や介護医療院などの利用料(食費・居住費含む)は対象になります。特別養護老人ホーム(特養)は、費用の2分の1が対象です。


4. その他、意外な控除対象

意外と知られていない、特定の条件で認められる費用をまとめました。

  • あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師による施術:

    「疲れを癒やすリラクゼーション」ではなく、肩こりや腰痛などの「治療」として受ける場合は対象です。

  • 医師の指示による温泉療養・運動療法:

    厚生労働省が指定する「指定施設」で、医師の指示(処方箋)に基づいて行われる場合に限り、施設利用料や交通費が対象になります。

  • 禁煙治療:

    医師の指導の下で行われる禁煙外来の費用も対象です。


5. 申告時の注意点:診断書などの「文書料」は対象外

ここで一点、非常に重要な注意点があります。

医療費控除の対象を証明するために医師に書いてもらう**「診断書」や「証明書」の発行手数料(文書料)は、実は医療費控除の対象にはなりません。**

あくまで「治療そのものにかかった費用」が対象であるという原則を覚えておきましょう。


まとめ

医療費控除の範囲は、私たちが想像するよりもずっと広いものです。

「これは対象かな?」と迷ったら、まずは「治療のために不可欠な支出かどうか」を基準に考えてみてください。そして、おむつ代や歯科矯正などの高額な費用については、早めに医師に相談して必要な書類を揃えておくことが、還付を受けるための第一歩となります。