医療費控除の対象になる「交通費」の全知識!バス・電車代の計算とメモ術


医療費控除を申請する際、意外と忘れがちなのが「通院にかかった交通費」です。病院に支払った代金だけでなく、そこへ行くための移動費用も立派な控除対象になります。

しかし、バスや電車は領収書が出ないことが多いため、「どうやって証明すればいいの?」「タクシー代は認められるの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。

この記事では、医療費控除の対象となる交通費の範囲から、領収書がない場合の賢いメモの残し方、計算のルールまでを詳しく解説します。


1. 医療費控除の対象になる交通費・ならない交通費

すべての移動費用が認められるわけではありません。税務署に認められるのは、あくまで「治療に直接必要で、かつ経済的・合理的な経路」での移動に限られます。

〇 対象になるもの

  • 公共交通機関の運賃: 電車、バス、モノレールなどの利用料。

  • タクシー代: 急病や怪我で歩行が困難な場合、陣痛時、深夜・早朝で公共交通機関が動いていない場合など、「やむを得ない事情」がある場合に限られます。

  • 付き添い人の交通費: 子供や高齢者の付き添いが必要不可欠な場合、その付き添い人の運賃も対象になります。

× 対象にならないもの

  • 自家用車のガソリン代・駐車場代: これらは「直接的な運賃」とはみなされないため、一切認められません。

  • 高速道路の通行料: 自家用車での移動に伴う費用のため対象外です。

  • 遠くの病院へ行くための不必要な費用: 近隣に適切な医療機関があるにもかかわらず、本人の希望だけで遠方の病院へ行く際の過剰な旅費は認められないケースがあります。


2. 領収書がない「バス・電車代」の管理・メモ術

公共交通機関を利用した場合、領収書が手元に残りません。この場合、**「自分で作成した通院記録(家計簿やメモ)」**が領収書の代わりとして認められます。

確定申告の際にスムーズに書類を作成できるよう、以下の項目をノートやスマホのメモ機能、またはエクセルなどに記録しておきましょう。

記録すべき4つの項目

  1. 利用した日付

  2. 診察を受けた人の名前

  3. 利用した交通機関と経路(例:〇〇バス、△△駅から□□駅まで)

  4. 往復の運賃(金額)

プロの整理術:

通院した日のカレンダーやスケジュール帳に、診察内容と一緒に「バス代〇〇円」と書き込んでおくだけでも十分な証拠になります。また、最近ではICカードの利用履歴を駅の券売機で印字したものや、家計簿アプリの履歴を保管しておくのも有効です。


3. タクシー代を申請する時の注意点

タクシーを利用した場合は、必ず領収書を保管しておきましょう。

また、税務署から確認を求められた際に応じられるよう、「なぜタクシーが必要だったのか」という理由をメモに残しておくと安心です。

  • 「骨折により自歩不可のため」

  • 「陣痛による緊急搬送のため」

  • 「夜間救急外来受診のため(バス運行なし)」

このように具体的な理由があれば、正当な医療費として認められます。


4. 通院交通費の計算方法と申告のコツ

医療費控除の申告書を作成する際は、病院代と交通費を合算して集計します。

  1. 病院ごとの集計: 「A病院への通院:診察代の合計 + 交通費の合計」という形でまとめます。

  2. 付き添い人の分を忘れない: お子さんの通院に付き添った場合、お子さんの運賃と保護者の運賃の両方を忘れずに加算してください。

  3. 経路は最短で: 運賃は「最も経済的な経路」で計算します。わざわざ遠回りをして高い運賃を支払った場合、その差額は認められない可能性があります。


まとめ

通院にかかる交通費は、一回一回は少額でも、通院回数が増えれば大きな金額になります。特に高齢のご家族がいる場合や、長期の通院が必要な場合は、節税効果が非常に高まります。

「領収書がないから」と諦めず、今日から通院の日付と経路をメモする習慣をつけてみてください。